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岡山近郊小旅行~イサムノグチ庭園美術を体験する(香川・牟礼) [美術館・博物館]

イサムノグチという人をご存知でしょうか。
インテリアや建築に興味のある方なら、きいたことがあるかもしれません。
彫刻家、というにはとどまらず、環境設計、陶器・和紙作品まで幅広く活動したアーティストです。

イサムノグチは、日本名「野口 勇」。1904年に日本人(父)とアメリカ人(母)のあいだに生まれ、幼少期から14歳まで日本で育ちました。
その後渡米し、世界中で活躍。パリ・UNESCO庭園や広島の平和大橋をはじめ、多くの世界的な作品を手掛けています。1988年没。

そんなイサムノグチの息吹を濃厚に感じられる「イサムノグチ庭園美術館」が、香川県・牟礼にあります。
牟礼は、庵治石(あじいし)という良質な花崗岩の産地であったため、当時パリ・UNESCO庭園のための石を探していたイサムノグチがその石と土地、そして職人たちに魅せられ、アトリエを構えることになったということです。没後、イサムノグチが使ったそのままの形を生かして公開されたこの美術館は、見学者の多くが海外からのお客様だそうです。このことからも、国際的なアーティストだということがわかります。

私は、友人の案内で今回初めて行くことになったのですが、実をいうと、それほどイサムノグチについて詳しく知っていたわけではありませんでした。はっきり知っていたのは、イサムノグチデザインのライトくらいなものです。
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イサムノグチ庭園美術館は、高松駅から車で25分程度の、自然豊かな町にあります。一見、美術館の入り口とは思えない風景が続きます。
isamunoguchi001.jpgisamunoguchi002.jpgisamunoguchi003.jpg
ここで注意。見学は予約制なので、飛び込みで行っても入ることができません。
しかも定員は一回につき20名程度。往復はがきによる申込みが必要です。
なぜ一度に入れる人数がこれほど少ないのかは、参加するとすぐにわかりました。

この美術館は、イサムノグチが石彫刻の制作に使用していたアトリエ・展示蔵・イサム家周辺・彫刻庭園の4か所からなります。
いわゆる「建物」の中を観て回るのではなく、屋内外の敷地内を学芸員の方が案内してくれます。
所要時間はあわせて1時間程度。
屋内型の美術館のように、作品に名前や解説が付いているわけではないので、知りたいことがあれば学芸員の方に聞きます。
こうした方式のため、20人という人数が限度なのでしょう。
なお、著作権の関係上、館内の写真撮影は禁止されています。なので、文章でできる限りお伝えしたいと思います。

まず案内されるのは、石壁に囲まれたアトリエと展示蔵。
驚くのは、「自然の中」に石の彫刻をはじめとする作品が置かれていることです。入念に整備されているものの、雨が降れば濡れてしまうし、石の間からは草が生えています。しかし、作品はどれもその自然の中に溶け込んでしまっているから不思議です。
大きな石を精密な計算をもとにカットし、つなぎ合わせ、磨き上げて作られる巨大な彫刻群。圧巻です。

30分後に移動した先は、イサム家周辺と彫刻庭園。実際にイサムノグチが生活していたという家は、先ほどの蔵同様、古い日本家屋を移築し改造したものだということです。古いけれど、とてつもなくおしゃれな空間です。
また、小高い山の上にのぼると、彫刻庭園が広がります。
源平の合戦の舞台として知られる屋島と、五剣山を臨む立地を生かした空間デザインを、見学者たちは思い思いに楽しんでいました。
どのようなデザインなのかは、ぜひ直接足を運んで確かめていただければと思います。
日本に居ながらにして、外から見た日本の魅力を感じることができる、楽しい空間です。

一時間のツアーを終えると、流れ解散となります。ショップではイサムノグチグッズを購入したり、関連書籍を読むことができます。

もちろん、アート的な思索を巡らせてもよいのですが、「難しいことを考えなくても、ただその空間を味わうだけで心地よい」。
観る人を選ばない美術館だと感じました。

ちなみに、敷地内に敷き詰められた砂は、見学者が入れ替わるたびに美術館スタッフの手でほうきがかけられているのだそうです。目に見えない心配りで、この素敵な空間が維持されていることに感動しました。

isamunoguchi004.jpg
おまけですが、見学者が駐車できる山椒山公園にあるおいしそうな遊具も、イサムノグチデザインです。

※イサムノグチ庭園美術館webサイトには、見学申込詳細やアクセスなどがくわしく書かれています。リンクフリーではなかったので、ご案内まで。
※パリ・UNESCO庭園webサイト→http://www.unesco.org/visit/jardin/uk/jardin.htm
※(庵治石について)香川商工会webサイト→http://www.shokokai-kagawa.or.jp/mure/ishi03-1.html
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コメント 4

ハムニ

あ!いいなあいいなあ(こればっか)いつか行かなくてはいけないリスト上位5位に常に入っているところです。

おいしそうな遊具。というのがいいですね・・・。

お師匠さんのブランクーシも好きなんですけど(引用したことあります)、この人の作品は「見たことがないシンプルさ」と言うものであふれている気がします。

広島の平和公園の橋の手すりがこの方ですが、ホントはあの「慰霊の火」がともる部分(馬の鞍みたいな)も彼がつくったものになる予定だったんですよね・・・コンペ審査委員の「米国籍の人間に作らせるわけにはいかない」という言葉でなくなっちゃったんですけど・・・・いや、彼だからこそ、(両国が融合して、また両国に引き裂かれた)彼にしか作る資格がないのではないか?とも思いました。余談ですが。
by ハムニ (2008-10-29 05:16) 

kirakira

ハムニさん

上位5位!すてきなリストですね。
なかなか他にはない空間でした。
広島のコンペの話、私も聞いたことがあります。
本当に、イサムノグチほど作者としてふさわしい人はいないと思いました。もったいないなあ。
国籍と民族とはまた違うと思うんですけどね。

いずれおいでくださいませ♪
お待ちしてますよー
by kirakira (2008-10-29 18:28) 

syousyou

イサムノグチ庭園美術館は自宅から5キロ圏内にあります。
庵治石のふるさとなので至る所に石のオブジェが転がっていますよ。
by syousyou (2009-01-05 21:43) 

kirakira

syousyouさま

庵治石がごろごろ・・・なんて贅沢な空間でしょうか。
素敵ですねえ。
イサムノグチをとりこにした石の産地、うらやましいです!
by kirakira (2009-01-05 23:35) 

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